感動の再開を描いた映画「LION/ライオン 25年目のただいま」

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5歳の子がインドで迷子になり25年ぶりに生みの親と再会を果たす、事実に基づいて制作された感動の映画「LION/ライオン 25年目のただいま」。本作は母と子の25年ぶりの再会を描くだけでなく、人身売買の実情を描いた作品でもあります。

そこで今回はまだ観ていない方のために、ネタバレなしで内容や感想について書いていこうと思います。


映画「LION/ライオン 25年目のただいま」

2017年に公開(米は2016年11月公開)された映画「LION/ライオン 25年目のただいま」ですが、今頃になってようやく観てみました。

私の好きなアーティストでもあるシーアの曲が主題歌に使われていたので、曲も作品も注目していたのですが、うっかり見るのを忘れていたのです。

そんなこんなですっかり本作の存在を忘れていたわけですが、ついにNetflixで「LION/ライオン 25年目のただいま」の配信が開始、さっそく視聴しました。

見た感想は「早く見ればよかった〜」と思いました。気持ちがスッキリとした感じです。おすすめの映画ですよ。まだ観ていないという方はぜひ!

「LION/ライオン 25年目のただいま」あらすじ


わずか5歳という年齢で、生まれ故郷であるインドで迷子になってしまった「サルー」。貧困層に生まれたサルーは、文字の読み書きはおろか、多くの言葉もまだ知らないまま。

そんなサルーは兄と行動を共にしていましたが、ふとした事から一人で回送列車に乗り込んでしまい、数日かけてインドの大都市へと移動してしまいます。

こうして文字も言葉もわからないサルーはインド国内で迷子になってしまい、様々なトラブルに見舞われながら孤児院へ。

その後、運良く養子に出されることになり、生みの親と生き別れたままオーストラリアへと渡ります。そして、養子として育ったサルーは何不自由ない生活を送っていましたが、25年ぶりに自分のルーツを探すことに。

手がかりは数少ない記憶と、Google Earthのみ。

実話をベースに作られたノンフィクション映画

「LION/ライオン 25年目のただいま」が注目を集めていた理由には、ストーリーが「実話」をベースに作られた映画であることが挙げられます。

「LION/ライオン 25年目のただいま」の原作となったのは、サルー本人による著書「25年目の「ただいま』 5歳で迷子になった僕と家族の物語」です。

映画と原作とでは基本的な部分は実話に基づいて制作されていますが、ところどころ実話とは異なる脚色が加えられているようです。

25年目の「ただいま」

サルー・ブライアリー (著), 舩山 むつみ (翻訳)

幼少期の僅かな記憶

突然ですが5歳の記憶ってありますか?それがさらに25年前の記憶。25歳になっていない方もいらっしゃるかもしれませんね。私自身はおぼろげな記憶しかありませんね。

ながらく実家に住んでいれば記憶もあるでしょうが、実家から長く離れると記憶も薄れますよね。5歳。。んー。記憶ない。

「LION/ライオン 25年目のただいま」の主人公であるサルーが記憶していたのは、ざっとこんな感じ。

  • 自分の名前は「サルー」
  • 苗字はわからない
  • 兄の名前は「グドゥ」
  • 回送列車に2〜3日運ばれた
  • 給水塔のある駅
  • 母は石拾いで生計をたてていた
  • 住んでいた場所は「ガネストレイ」

5歳だからこんなもんでしょう。

迷子になった衝撃から迷子になる近辺の記憶は残っているでしょうが、読み書きができずに言葉もわからない、自分の名前しかわからないような状況を想像をするとゾッとしますよね。

インド国内の言語の違い

劇中では、回送列車で運ばれたサルーがインドの大都市である「コルカタ(カルカッタ)」に降り立ちますが、同じインド内なのにサルーはコルカタ市民の言葉がわかりません。

というのも、インドはご存知の通り1400万人もの人口が住むかなり大きな面積を占める国で、国内で使用されている言語も様々なようです。

インドで公用語とされるのは「ヒンディー語」ですが、サルーが降り立ったカルカタではベンガル語が共用語として使われていました。

ヒンディー語を筆頭に、ベンガル語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラート語、マラヤーラム語、カンナダ語、オリヤー語、パンジャーブ語、ビハール語、ラージャスターン語、アッサム語、ビリー語、サンタル語、カシミール語などが、比較的話者人口の多い言語である。ただし、ビハール語やラージャスターン語は複数の言語ともみなせる。ベンガル語は隣接するバングラデシュの公用語でもある。

サルーが住む地域ではヒンディー語が使われ、ベンガル語が使われていなかったためインド国内と言えどサルーは言葉が理解できなかったわけです。

「LION/ライオン 25年目のただいま」のキャスト

「LION/ライオン 25年目のただいま」はサルーの幼少期と青年期が描かれますが、サルーの子役時代を演じていたのが「サニー・パワール」くん。

サニーくん、なんと製作スタッフがキャスト探しに奔走していた際に、インドのムンバイにて見出された逸材で、もちろん本作が初主演映画なのです。とても素人、さらに子役とは思えない演技力でした。

また、サルーのお兄ちゃん役「グドゥ」を演じていた「アビシェーク・バラト」くんもまた、現地でキャスティングしていた製作スタッフに見出された逸材で、本作が初出演映画でした。

残念ながら日本未公開作品ですが、デミ・ムーア主演の人身売買をテーマにした映画「Love Sonia(日本未公開)」には、サニーくん、アビシェークくん共に出演しているようです。

サルー/ デブ・パテル


主人公「サルー」を演じていたのがイギリス出身の「デブ・パテル」さん。

デブ・パテルさん、実は2008年公開の映画「スラムドッグ・ミリオネア」の主演を努めた方で、映画の大ヒットで一躍人気俳優の一人に輝いた方でもあります。

「スラムドッグ・ミリオネア」も面白かったですねー。あの少年がこんなに大きくなったわけです。

このほか、「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」「チャッピー」「奇蹟がくれた数式」等に出演。

スー/ ニコール・キッドマン

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By Georges Biard, CC BY-SA 3.0, Link


サルーを養子に迎えるオーストラリア在住の育ての母「スー」を演じているのが「ニコール・キッドマン」です。

言わずとしれた名女優 ニコール・キッドマンですが、本作でも素晴らしい演技が見られました。ただ、美しいのが仇となって、やや「お母さん」という感じがしなかったかなぁという気もしなくもありません。

主な主演作には「デイズ・オブ・サンダー」「誘う女」「めぐりあう時間たち」「ライラの冒険/ 黄金の羅針盤」など多数。

ジョン/ デビッド・ウェナム


サルーの育ての父であり、スーの夫でもある「ジョン」を演じているのが「デビッド・ウェナム」さん。

デビッドさんは、大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング」の2章「ロード・オブ・ザ・リング/ 二つの塔」、3章「ロード・オブ・ザ・リング/ 王の帰還」に出演していた俳優さんで、2017年公開のジョニー・デップ主演映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ 最後の海賊」にも出演する名俳優さんです。

劇中では非常に理解のある、包容力のある育ての父を演じられていました。

ルーシー/ ルーニー・マーラ

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By Leod23 – File:Rooney-mara-2013-cfda-awards-03.jpg, CC BY-SA 4.0, Link


大学生となったサルーの恋人役「ルーシー」を演じているのが「ルーニー・マーラ」です。

晴れて大学生となったサルーですが、ルーシーに一目惚れ。その後はサルーにとってかけがえのない存在になりますが、ルーシー演じるルーニー・マーラは本当に可愛らしいキャラクターでした。

マーク・ザッカーバーグの人生を描いた、ジェシー・アイゼンバーグ主演の映画「ソーシャルネットワーク」でも、大学生時代のマーク・ザッカーバーグの恋人を演じていましたね。

その他、「ドラゴン・タトゥーの女」「her/世界でひとつの彼女」など出演作多数。

「LION/ライオン 25年目のただいま」の主題歌

「LION/ライオン 25年目のただいま」は楽曲も注目され、惜しくも受賞は逃しましたが作曲賞としてアカデミー賞、ゴールデングローブ賞にもノミネートされました。

「LION/ライオン~25年目のただいま~」オリジナル・サウンドトラック

第89回アカデミー賞で<作品賞>含む合計6部門にノミネートされている話題の映画『LION/ライオン~25年目のただいま~』のオリジナル・サウンドトラック。“顔なき”天才ポップ・スター=シーアが書き下ろし歌唱している主題歌「ネヴァー・ギヴ・アップ」を収録。

エンディング曲として使用された「LION/ライオン 25年目のただいま」の主題歌

「LION/ライオン 25年目のただいま」のためにアーティスト「シーア」が描き下ろした楽曲「Never Give Up(ネバーギブアップ)」は、この映画の世界観に非常にマッチした曲です。

ネバーギブアップ。
諦めずに生みの親との再会を果たした、まさにサルーのための曲とも言えますね!

ちなみにこの楽曲は「LION/ライオン 25年目のただいま」のサントラにのみ収録。シーア名義のアルバムには収録されていません。

世界的にも評価の高かった作品

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Photo credit: julialat34 on VisualHunt.com / CC BY


「LION/ライオン 25年目のただいま」は上映前から前評判も高く、注目を集めた作品でした。ゴールデングローブ賞には4部門、アカデミー賞には6部門がノミネートされましたが、残念ながら両大賞の受賞は逃しています。

とはいえ、オーストラリア映画協会賞では12部門で受賞してるほか、世界中の映画賞では多くの受賞歴を誇る作品でもあります。

第89回アカデミー賞

「LION/ライオン 25年目のただいま」が公開された2016年は名作揃いの年でもあって、賞レースも非常に混戦していたのを思い出しました。

この年の注目映画と言えば大ヒットを記録した「ラ・ラ・ランド」ではないでしょうか。数ある賞レースでも「ラ・ラ・ランド」の受賞が濃厚か?と思われていましたが、蓋を開けてみれば「ムーンライト」も強し。

「LION/ライオン 25年目のただいま」も注目を集め、アカデミー賞を始めとした賞レースにノミネートされましたが、結果は残念ながら受賞ならずで終了しました。

作品賞

  • ムーンライト
  • メッセージ
  • フェンス
  • ハクソー・リッジ
  • 最後の追跡
  • ドリーム
  • ラ・ラ・ランド
  • LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
  • マンチェスター・バイ・ザ・シー

助演男優賞

  • ジェフ・ブリッジス『最後の追跡』
  • ルーカス・ヘッジズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
  • マハーシャラ・アリ『ムーンライト』
  • デーヴ・パテール『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』
  • マイケル・シャノン『ノクターナル・アニマルズ』

助演女優賞

  • ナオミ・ハリス『ムーンライト』
  • ヴィオラ・デイヴィス『フェンス』
  • ニコール・キッドマン『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』
  • オクタヴィア・スペンサー『ドリーム』
  • ミシェル・ウィリアムズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

脚色賞

  • 『ムーンライト』バリー・ジェンキンス、タレル・アルヴィン・マクレイニー
  • 『メッセージ』エリック・ハイセラー
  • 『フェンス』オーガスト・ウィルソン
  • 『ドリーム』アリソン・シュローダー
  • 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』ルーク・デイヴィス

作曲賞

  • 『ラ・ラ・ランド』ジャスティン・ハーウィッツ
  • 『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』ミカ・レヴィ
  • 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』ダスティン・オハロラン
  • 『ムーンライト』ニコラス・ブリテル
  • 『パッセンジャー』トーマス・ニューマン

撮影症

  • 『沈黙 -サイレンス-』ロドリゴ・プリエト
  • 『ムーンライト』ジェームズ・ラクストン
  • 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』グリーグ・フレイザー
  • 『メッセージ』ブラッドフォード・ヤング
  • 『ラ・ラ・ランド』リヌス・サンドグレン

第74回ゴールデングローブ賞

第74回ゴールデングローブ賞では「LION/ライオン 25年目のただいま」は4部門でノミネート。残念ながら受賞ならずでした。

ゴールデングローブ賞でも「ラ・ラ・ランド」は7部門ノミネート、すべて受賞という快挙を達成することに。こりゃ年が悪かったなぁ。

作品賞(ドラマ部門)

  • ムーンライト
  • ハクソー・リッジ
  • 最後の追跡
  • LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
  • マンチェスター・バイ・ザ・シー

助演男優賞

  • デーヴ・パテール『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』
  • サイモン・ヘルバーク『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
  • マハーシャラ・アリ『ムーンライト』
  • アーロン・テイラー=ジョンソン『ノクターナル・アニマルズ』
  • ジェフ・ブリッジス『最後の追跡』

助演女優賞

  • ヴィオラ・デイヴィス『フェンス』
  • ナオミ・ハリス『ムーンライト』
  • ニコール・キッドマン『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』
  • オクタヴィア・スペンサー『ドリーム』
  • ミシェル・ウィリアムズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

作曲賞

  • 『ドリーム』ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォルフィッシュ
  • 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』ダスティン・オハロラン、ハウシュカ
  • 『ラ・ラ・ランド』ジャスティン・ハーウィッツ
  • 『ムーンライト』ニコラス・ブリテル
  • 『メッセージ』ヨハン・ヨハンソン

タイトル「LION/ライオン」の意味とは

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「LION/ライオン 25年目のただいま」は、迷子になった子供と生みの親が25年ぶりに再会するストーリーです。

しかし、映画を最後まで観ていない方はタイトルに使われている「LION/ライオン」の意味を知ることはないでしょう。

ある映画の批評サイトで本作の総評を「養子でなくて人身売買」と書き込んでいる方がいました。「最初の20〜30分で理解できる映画」とも評していましたが、しっかりと内容を見ていないで書き込んでいるようですね。映画の意図を全く汲み取れていないようです。

ネタバレしてしまうので「LION/ライオン」の意味を書くことはしませんが、この意味だけでなく、多くの事実はエンディングで明らかになります。

エンドロールで明かされる事実

冒頭でも触れたとおり、「LION/ライオン 25年目のただいま」はお涙頂戴の感動作というだけでなく、インドにおける人身売買の実情を描いている作品でもあり、映画の大ヒットによって世界中の人にこの現状が知られるきっかけとなったわけです。

実際に本作のエンディングでは、人身売買などの悪影響による世界の恵まれない子供たちを支援するとのメッセージが明記されていますが、インドで行方不明になる子は毎年8万人以上とのこと。

サルーは運良く良心的な里親に育てられましたが、2度と家に帰ることの出来ない不幸な子供たちがこんなにもいることに驚きを隠せませんでした。

まとめ

大学生時代の友人が「当時の列車の速度を導き出し、列車に乗っていた時間を掛けて移動距離を試算する」という方法を提案したのには目からウロコでした。

すっかりGoogle MapやGoogle Earthに頼ってしまいがちですが、こうしたアナログな方法も大事ですよね。あまり使用する機会はなさそうですが笑

結末はすでに判明している映画ながら、見る人の感動を呼ぶ「LION/ライオン 25年目のただいま」。

すべての事実はエンドロールに隠されていますが、内容自体は事実に基づいて作られたストーリーで、インド国内で発生している実情を垣間見られる、とても考えさせられる映画です。

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